真空ポンプとは?
真空とは、大気圧よりも低い圧力の気体で満たされた状態をいい、容器中の空気や非凝縮ガスなどの気体を容器外に排出し、容器内を大気圧以下の圧力にする、あるいはそれを維持する機械を真空ポンプといいます。
人が空気を吸う、また赤ん坊がミルクを吸う、このようなことが出来るのは、人間が大気圧よりわずかに低い圧力を作り出す立派な真空ポンプ(肺)を持っているからで、これが無ければ生きていけません。肺はみずから膨らむのではなく、横隔膜などによって胸郭(胸を包む袋)が拡大されて肺胞が膨らみ、真空になるのです。また図1の「たこ」は吸盤を使って、吸盤内部の空間をピストンを引くように広げて、外部の圧力より下げて獲物を離さないのです。
これらの2つの例では、空間を広げて圧力を下げていますが、真空ポンプでは、内部の空間から外部へ積極的に気体を排除して、内部の圧力を下げています。私たちの身のまわりをみても、図1のような電気掃除機、あるいはこれを使って容器内の空気を排出する布団の圧縮などがあり、また真空を使って作った製品が沢山あります。
(たとえば真空蒸着を例にとりますと、めがねや時計、はさみなどは真空を使って表面に薄い金属の膜をつくっています)真空ポンプには機械式と蒸気噴射式があり、さらに機械式には往復動形と回転形がありますが、ここでは機械式の回転形ついて説明しましょう。
人が空気を吸う、また赤ん坊がミルクを吸う、このようなことが出来るのは、人間が大気圧よりわずかに低い圧力を作り出す立派な真空ポンプ(肺)を持っているからで、これが無ければ生きていけません。肺はみずから膨らむのではなく、横隔膜などによって胸郭(胸を包む袋)が拡大されて肺胞が膨らみ、真空になるのです。また図1の「たこ」は吸盤を使って、吸盤内部の空間をピストンを引くように広げて、外部の圧力より下げて獲物を離さないのです。
これらの2つの例では、空間を広げて圧力を下げていますが、真空ポンプでは、内部の空間から外部へ積極的に気体を排除して、内部の圧力を下げています。私たちの身のまわりをみても、図1のような電気掃除機、あるいはこれを使って容器内の空気を排出する布団の圧縮などがあり、また真空を使って作った製品が沢山あります。
(たとえば真空蒸着を例にとりますと、めがねや時計、はさみなどは真空を使って表面に薄い金属の膜をつくっています)真空ポンプには機械式と蒸気噴射式があり、さらに機械式には往復動形と回転形がありますが、ここでは機械式の回転形ついて説明しましょう。
図1 電気掃除機を利用したふとんの圧縮
(遠心圧縮機使用)
(遠心圧縮機使用)
真空の程度について
1気圧は1.01325×105パスカル(Pa)ですから、0~1.01325×105Paの圧力範囲を真空といいます。今日の技術で作ることの出来る真空は、1.01325×105~10-10で、真空の程度は、表1に示しますように、低真空から超高真空まで分類されます。
大気圧では、1辺の長さが1μm(マイクロメータ、10-6m)の立方体中には、2.6×107個の分子 が空間を飛び交って自由運動しています。1個の分子は、平均して0.06μm進むごとに他の分子に衝突し、この距離を平均自由行程といい、温度に比例し圧力に逆比例します。また、沢山の分子が壁にぶつかることによって押される力が圧力です。大気圧の状態から分子をどんどん排出していきますと、平均自由行程は増えていきますが、壁にぶつかる分子数が減って圧力は下がっていくのです。
図2は真空の度合いによって流れが変わる様子を表しています。分子が沢山あるときは、流体(連続体)としての性質を示し、壁面上では流体分子の平均速度が0(ノンスリップ条件)となる粘性流となります。
分子数が減ってくると平均自由行程が長くなり、分子同士が衝突する機会が少なくなり、壁面上で気体分子の平均速度が0でなくなるすべり流となります。
さらに分子数が減ってくると、気体分子どうしの衝突の割合と気体分子と壁面との衝突割合がほぼ同じオーダーになる中間流、そして気体分子の衝突がほとんどなくなる自由分子流へと変化します。これらの流れを区分する目安として、平均自由行程と流れの代表寸法(例えば壁面間の距離)との比を用い、これをクヌッセン数(Kn)と呼び、表1のようになります。
大気圧では、1辺の長さが1μm(マイクロメータ、10-6m)の立方体中には、2.6×107個の分子 が空間を飛び交って自由運動しています。1個の分子は、平均して0.06μm進むごとに他の分子に衝突し、この距離を平均自由行程といい、温度に比例し圧力に逆比例します。また、沢山の分子が壁にぶつかることによって押される力が圧力です。大気圧の状態から分子をどんどん排出していきますと、平均自由行程は増えていきますが、壁にぶつかる分子数が減って圧力は下がっていくのです。
図2は真空の度合いによって流れが変わる様子を表しています。分子が沢山あるときは、流体(連続体)としての性質を示し、壁面上では流体分子の平均速度が0(ノンスリップ条件)となる粘性流となります。
分子数が減ってくると平均自由行程が長くなり、分子同士が衝突する機会が少なくなり、壁面上で気体分子の平均速度が0でなくなるすべり流となります。
さらに分子数が減ってくると、気体分子どうしの衝突の割合と気体分子と壁面との衝突割合がほぼ同じオーダーになる中間流、そして気体分子の衝突がほとんどなくなる自由分子流へと変化します。これらの流れを区分する目安として、平均自由行程と流れの代表寸法(例えば壁面間の距離)との比を用い、これをクヌッセン数(Kn)と呼び、表1のようになります。
図2 連続流と分子流
表1 真空の程度と圧力の範囲および流れの状況
どんな真空ポンプがあるの?
真空を作り出す場合、大きく分けて原理の違う2つの真空ポンプを使うことになります。低中真空を取り扱うポンプでは原理的には、気体を連続体として粘性流を取り扱う圧縮機を使います。これは通常使われる圧縮機と同じです。中高真空を取り扱うポンプでは対象が分子流ですので、図3のようなターボ分子ポンプを使います。
これは分子を捕まえて外に排出するものです。構造は、ファンのような回転する羽根(動翼)を沢山重ね、その間に静止した羽根(静翼)を入れた構造です。動翼の先端の周速度は、秒速250m~400mもの高速になり、軸受は気体が油の分子で汚されないために、気体軸受あるは磁気軸受を主として使います。
ターボ分子ポンプの原理を説明しますと、以下のようになります。
図4におきまして、分子(赤色)は動翼(黄色)ではじき飛ばされて、静翼に当たり、次々と動翼・静翼を経て排気側に向かうのです。この場合、動翼は白矢印の方向に回転して実線の羽根から点線の羽根に移動します。このため吸入側の分子は動翼を左から右に通過しやすいですが、吐出側の分子は動翼の回転によって遮られ右から左に通過しにくいのです。すなわち、動翼を右から左に通過する分子もありますが、左から右に通過する分子の方が多いため、分子が排出されるのです。
高真空を得るためにはターボ分子ポンプだけでは成立せず、低中真空ポンプを組み合わせなければいけません。あたかも飴がいっぱい入った瓶を空にするためには、まず一握りずつ飴を取り出し、最後の方には1個ずつ指で摘んで取り出すのに似ています。
真空技術では容器外部から内部への漏れに注意することが肝要です。たこは吸盤の脱皮によって、吸盤の性能を維持しております。今後の素粒子、 バイオ、核融合、半導体研究や研究開発などには、真空ポンプの性能向上がますます必要になると予想されます。
これは分子を捕まえて外に排出するものです。構造は、ファンのような回転する羽根(動翼)を沢山重ね、その間に静止した羽根(静翼)を入れた構造です。動翼の先端の周速度は、秒速250m~400mもの高速になり、軸受は気体が油の分子で汚されないために、気体軸受あるは磁気軸受を主として使います。
ターボ分子ポンプの原理を説明しますと、以下のようになります。
図4におきまして、分子(赤色)は動翼(黄色)ではじき飛ばされて、静翼に当たり、次々と動翼・静翼を経て排気側に向かうのです。この場合、動翼は白矢印の方向に回転して実線の羽根から点線の羽根に移動します。このため吸入側の分子は動翼を左から右に通過しやすいですが、吐出側の分子は動翼の回転によって遮られ右から左に通過しにくいのです。すなわち、動翼を右から左に通過する分子もありますが、左から右に通過する分子の方が多いため、分子が排出されるのです。
高真空を得るためにはターボ分子ポンプだけでは成立せず、低中真空ポンプを組み合わせなければいけません。あたかも飴がいっぱい入った瓶を空にするためには、まず一握りずつ飴を取り出し、最後の方には1個ずつ指で摘んで取り出すのに似ています。
真空技術では容器外部から内部への漏れに注意することが肝要です。たこは吸盤の脱皮によって、吸盤の性能を維持しております。今後の素粒子、 バイオ、核融合、半導体研究や研究開発などには、真空ポンプの性能向上がますます必要になると予想されます。
図3 複合ターボ分子ポンプ
図4 ターボ分子ポンプの作動原理
真空ポンプの用途
- 大気圧の利用;真空との圧力差で押す力、吸いつける力
(布団の圧縮、真空成形、掃除機、集塵機、抄紙機、吸盤、紙幣計算器[(ATM〔自動金銭出納機〕で一枚ずつ吸着して枚数を数える]など) - 断熱(魔法ビン等)
- 冷却(蒸発潜熱の利用;加速器の超伝導磁石用ヘリウムの冷却など)
- 乾燥(水分を蒸発させる;ドライフードなど)
- 酸化を防ぐ(真空パック食品、エバーフラワーなど)
- 脱ガス(鉄鋼、ステンレス鋼などの精錬)
- 蒸発分子やイオンが蒸着するまでの他の分子との衝突(化学反応など)低減(真空蒸着など)
- 蒸留(重油からワックス、潤滑油の製造など)
- 粒子(電子、素粒子など)の衝突低減(電子顕微鏡、電子管、加速器など)
- 汚染物、生成物、不純物などの有害物の除去(半導体、核融合など)
- スペース・チェンバー(宇宙空間模擬室)
- 放電を利用する(レーザー、蛍光灯など)
- 化学反応を防ぐ(金属の溶解、熱処理などの真空炉など)