ポンプ吸込水槽の形状や寸法はポンプの性能や運転状況に大きな影響を持ち,その設計計画に際しては単なる土木上の見地だけでなく,ポンプ作用に関する知識が必要である。これは,吸込水槽の形状,寸法により,フローパターンが変化し,空気吸込渦,あるいは水中渦が発生すると騒音や振動発生の原因となり,更に発達すると性能低下から揚水不能へと至る現象を引き起こすからである。吸込水槽は上記の点を配慮して設計する必要があるが,その形状は千差万別であり,また,その上流水路条件も画一的でなく,その上経済性についても重視する関係上,ややもすると実機において前述の問題を起こす場合がある。実機においてこの様な問題が起こると,その対策が困難であるケースが多い。したがって,設計段階において問題点の有無を検証することが望ましく,その方法として現在のところポンプ吸込水槽模型試験が最も確実な方法として推奨できる。
1984 年1 月に制定された日本機械学会基準「ポンプの吸込水槽の模型試験法」(JSME S004-1984)は,吸込水槽の模型試験方法を規定した学会基準としてポンプ吸込水槽の計画に広く利用された.この基準を改定するために 2003 年3 月にターボ機械協会に学識経験者, 公的機関研究者,ポンプメーカおよびユーザの技術者から成る「ポンプの吸込水槽の模型試験法基準改訂委員会」が設置され,近年の国内外の技術動向に即した形でターボ機械協会基準TSJ S 002(2005)「ポンプ吸込水槽の模型試験法」が作成・発行された。その後ターボ機械協会に「ポンプ吸込水槽模型試験法の調査・研究分科会」が設置され,内外の文献調査,相似則などに関する検討,基準の英語化,現行基準の問題点についての討論等が継続的に行われてきた。
この度2005 年の前基準の制定から12 年を経て基準の見直しを行い,近年のCFD の大きな発達とこれまでに多数行われてきた模型試験の経験とを反映させて一部を改訂することとした。この基準には, これまでに蓄積された豊富な技術的知見のみでなく, これからの応用が期待される流れのコンピュータシミュレーションの適用について解説と実施例を加えてある。また英語版を付属したことから,本基準が国際的に利用されることも期待される。
著者:ターボ機械協会
出版:日本工業出版
2019年4月12日発行
A4版/162頁
販売価格 4,950円 (税込)